銀座で ジャズバーをやっているという方から 事務所宛にお手紙をいただいていた 消印は 25日 クリスマスの 最後のイルミネーションで彩られた 暮れ時の中央通りあたりで 口開け前に 投函していって下さったのだろうか 千秋楽をご覧になっていた “You and the night and the music 〜貴女と夜と音楽と〜” シアターガイドの中の 小さな芝居のタイトルが この名曲に由来するのだと気づいて 駆けつけて下さったのだという ビリー・ホリデイの似顔絵がついた 手作りの便箋の中に その一文はあった 〜もう少しリラックスした雰囲気での山岸さんの歌を 聴きたいですね〜 もしも おととい読んでいたら 痛みだけで捉えていたかもしれない 舞台で歌う 奈々子の歌 だから あれはあれでいい そんな含みを 逃して読んでしまったかもしれない 今は 聴きたいですねと 書いて下さった その一言に あたたかな灯りを ともすことができている あたしは演じ手だけど プロの歌い手ではないけれど プレイボートで生きたくて 真実 自分を生きたくて 演じる歌 と 葛藤した その葛藤は そのまま あたしがあたしを生きているということに 他ならなかったけれど 何か 自分のあずかり知らぬ 烙印のようなものを捺されてしまいそうで こわかった なんたる傲慢 けれどその予感は 払っても払っても拭いきれぬまま ついに 現実のものであったことを知る 出来上がってきた本番のV の中に 歌を 歌っていない自分の姿を見た 懸命だった そこに隙間はなかった けれど それだけ 何に縛られ 何に囚われていたのか 自分の歌は嘘つかない 自分で書いたセリフが そのまま自分の頬を打った 誰のせいでもない ひたすらに 自分が自分をやれなかっただけ モニターの中で歌う自分は すでにそれが分かっている そうして笑顔で 客席に向かっている なんたる傲慢 何に縛られ 何に囚われていたんだ けれどどうしても 手放しきれなかった 夢だったから 心から愛した歌だったから やりきれなかった憧れが 自分の胸を撃ちつづけ 終わった時には 空洞になっていた 生ききれなかった その思いが さらなる傲慢の証しとして その空洞に鳴り響き 鳴り止まず 自分を責めたて 身をすくませ 二度と 歌うまい そう思った 本気で 泣いた その傲慢に 返事をくれた男たちに 昨日 会った 許すと 言ってくれた あたしのままで 歌っていいと 言ってくれた あまりにも恐ろしく あまりにも贅沢な あたしがあたしを生きる明日を 知らないところで 用意してくれていた 絶句した もはや どんな言葉で甘やかされても 信じることのできないあたしに 確かな形を 贈ってくれた なぜ… …なんてことを いいの?あたし あたしで… 今までも ずっと会ってきた この大事な人たちと はじめて本当に出会えた気がした 過ぎた日の銀座から届いた手紙は だから ただしく読むことができた 毎晩 ジャズと生きているその方が 時間を作って 送って下さった 手紙 春の鎌倉に いらっしゃいませんか お返事には そう書こうと思っている そうして その方のジャズの城をたずねて 銀座を さがしてみようと思っている あたしの 大切な人たちといっしょに。 |