ある作家の話。
戦友と言ってもいい親友が亡くなって、その棺に、まだ作家になる前のその人はひとまとめの原稿用紙を納めます。
それは自分の道ならぬ恋を綴った一本の掌編。
すべてを知っていた友に持っていってもらうことで、苦しい片恋に決別させて欲しいと、ギリギリの思いで入れたのでした。
が、ほどなくしてその恋は成就します。
恋の火は消えかかっては燃え上がり、別々の人生を送りながらどうしても別れることが出来ない、恋の熱が死なないのです。
ああ。そうか。これは終らないのだ。
30年が経った頃、ふと親友の野辺の煙を思い出して、作家は確信します。
自分があの時した事は、何か“定め”の釦を押すような事だったのかもしれない…。
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媚薬の物語を書きたいと言ったら、こんな話をしてくれた人がいました。
笑った目の中を探っても、誰のことなのか、本当なのか嘘なのか、わからなかったけど…。
定めのボタン…妙に心に残った話です。 |