甘い小道具たち













本番で使った、フィルトゥロダモーレ3本
 
透き通った液体  レモン色の液体 琥珀色の液体
これは今あたしの手元にあります これはオジタマが
引き取りました
これはもち子さんが
お持ち帰り

柴教授がそれぞれに渡した3つの瓶。
教授の、秘めた心理が滲み出ているような形が揃うといいなーと思っていました。


ところが困ったことに、ピンと来る媚薬の瓶が全然見つからない…。

なにせ稽古で使っていた瓶たちを、1年半その気で見つめ続けてこの本を書いたので、
もはやあたしのフィルトゥロダモーレのイメージは、そこから離れられなくなっており、
小屋入りした日にもまだ本チャンを探し出せずにいたのですね。

これはもうあたしには無理だわ、ということで…




透き通った液体の瓶と、レモン色の液体の瓶は、二階堂さんが見つけてきてくれました。

 このレモン色の瓶、ゴツゴツしてて面白いデザインでしョ?
 3つの中でも、一番ビジュアル的特色が欲しかったので、まさにパーフェクトチョイス。
 ムラーノ島あたりで拾った出来損ないみたいな瓶…
 柴教授は、親友にわざとそんなモノをあげて、
 早く冗談だって気づいてくれよ…と願っていたのかもしれません。






琥珀色の液体の瓶は、もち子さんのお嬢さんの一輪挿しです。

 小ぶりなハンドバックにも納まりやすい、女らしい小瓶…
 そんな瓶を選んで贈った柴教授は、意外に繊細な人なのですね。


 舞台裏の木村家では
 「媚薬の瓶がみつからないのよ〜」
 「ママ、これはどう?」
 そんな会話があったんじゃないかナ、
 ホントに仲のよい姉妹のような母娘なのですヨ〜。






そして、透き通った媚薬 “千年の恋”の瓶。

 これはやっぱり二階堂さんも、ヴェネツィアン・ブルーの瓶の形から離れられなかったようです。
 実際、このフォルムは古代ペルシア時代からあるベーシックなデザインですからね、
 世界中の人に配りたくなるぐらいの量が、入る大きさじゃないとだし…(笑)。
   











      柴教授の日記
 えー元々はわたくしの古い日記帳です。

 シンプルなデザインなので、男性が持っていてもおかしくないかな、
 ということで今回、柴教授に進呈いたしました。
 自分で加工するのは忍びないので、二階堂さんにお渡ししたら、
 色んな汚しをかけて表面もこのようにザリザリに(笑)。

←開けると(
触ってみて)例の世界樹の詩とドルチェ・ヴィータの住所が…
  2人に謝罪って言葉も、ちゃんと丸で囲ってあってビックリ。
  この画像でも、「佐倉」の文字はハッキリ読めますネ。
  長ゼリ用のカンペでもあったみたいだけど…(爆)

 昔あたしが記したページは、もちろん破って渡しましタ。
 そこに何が書かれていたかは、ヒ・ミ・ツ。だはは。










      サンジャコモ広場のフォート
  ヴェネツィア本島のほぼド真ん中、
  有名なリアルト橋のたもとの、市場の近くにある広場。
  サン・ジャコモはヴェネツィア最古の教会で、千年前にはもう、
  このバカみたいに大きい時計台も(
失礼!)、
  ここに建っていたのだそうです。
  旅行者は入って来ない、ヴェネツィアっ子の生活の場です。

  初稿では、40年前ここのカフェで、佐倉父がアルバイトをし、
  媚薬をみつけた若き日の柴教授が飛び込んできて、
  縹と千草が互いに媚薬を入れあった、という、
  4人の青春の舞台となっていました。











      カフェ“ ドルチェ・ヴィータ ”のカップ&ソーサー
        ↑
このカップ&ソーサー、本物の ・。*゜・アンティーク ゜・*。・ です!
イタリアンカフェって意外にシンプルな物を使っている処が多く、でもそれだと舞台的にはあまりにも無機質。
やっぱりお客様はこういう処から、この店の日常とか歴史とか、“想い”を汲み取ろうとされますものね、
あだや疎かにできない大きなポイントなのです。
で、ニュアンスのある素敵な物となると、はい、とってもお高いのです…小道具の範疇じゃなくなっちゃう。
うう〜〜〜と思っていたら、

「ウチにローズピンクの古いのがあるから持ってきたげよか」
「でも磯見さん、10脚もお借りしたらお店に迷惑かけちゃう」
「大丈夫。30脚ぐらいあるから」


失礼ながらあたしは、使い古しという意味だと思ってたのです。
そしたら、なんと、古いって言うのはアンティークってことだったのですっ。
磯見さんのミルクホールは、カフェだけでなく骨董屋さんでもあったのでした…絶句。

そうして到着したカップの、なんとうつくしいこと…女優陣はもうため息の嵐ほ〜っ。
戦後の輸出用に作られた美濃焼きだそうで、くちびるに触れる薄い感触の、まーやさしいこと!
本番中やプリセット中に割っちゃったらどーしよー?!と、けっこうドキドキでしたけど、
みんなに大切に愛されて、無事にお勤めを果たしてくれ、鎌倉に帰っていきました。
ドルチェ・ヴィータの格をあげてもらえて、ホントにありがたかったです










      カフェ“ ドルチェ・ヴィータ ”のコート掛け
 あたしはただ壁にババンと板が打ってある、ぐらいにしか考えていなかったのですが、

 「ダメだよそれじゃあ、佐倉が作った店でしょ、アイツには絶対こだわりがあるよ」
 「そ、そですかね、やっぱし」
 「親の心子知らずだなあ」
 「しゅ、しゅびばしぇん。えーと、ウチのお父さんだと、どんな感じの物を選びますかね…」
 「持ってきたげる」


 ・・・またもや、オジタマの一言に甘えてしまいました。
 ←これ
(触ってネ)ブルーの明かりが入ると、謎めいたシルエットが浮かび上がって、
 思わぬ舞台効果を上げてくれた、素ン晴らしく重厚な一品でございました。。。
















      素晴らしい木、アロエ
 他ならぬ胡桃さん=那珂村タカコちゃんのご自宅よりお借りしました。

 お庭にいっぱいゴロゴロしているらしく、立派に育って(笑)
 ホント、木って感じですものね、
 理想的な大きさでありがたかったです〜。
 頭が重いので、オープニングの掃除で暴れる度にユラユラさせちゃって、
 ゴ、ゴメンネ〜と謝りながら踊ってましタ。

 例の2度の治療のシーンでは、毎回ポキッとやっちゃうのは可愛そうなので、
 二つだけ折り取って、使ってました。
 実際は、ヤケドをしたらすぐ流水!に勝る特効薬はないらしいんですが、
 それは日本のように、水があるのが普通のこと、という地域での話。

 今のこの国の平和は、本当に奇跡的な努力の賜物なんだと、
 身に沁みて思っていたいですよね。










      カフェ“ ドルチェ・ヴィータ ”の薔薇
これはあたしのこだわりです
RoseGardenの芝居では、必ずこの赤い薔薇を出す事になってマス(笑)。

3年ぶりに箱から出して、また逢えたネ、と、1本1本にご挨拶。
活け込みをして、組みあがったセットに置いた途端、
辺りをはらうような気高さとともに、華やかな息吹がパーっと広がって… 
芝居のセットが、“カフェ・ドルチェ・ヴィータ”になった瞬間でした。

あるとないとじゃ大違いです。
お花はなんでも好きだけど、薔薇はこれだからタマらないのです。
本当は生花を活けたいところですが、舞台の上は過酷な環境なので、ネ。 
でもこれ、レプリカとは思えない質感でしョ?

この薔薇を見るたびに、最初の気持ちに帰ります。
RoseGardenの大切な守り神です。
 











      ヴェネツィアみやげのマスケラ
 彩さん=保谷果菜子さんのお持ち物。
 カルナヴァーレのマスケラ(カーニバルの仮面)、本物です。
 神秘的ですよね、思わずじーっと見入っちゃう。

 やはりヴェネツィアの物語ともなれば、マスケラは必須アイテム。
 ハンズあたりを物色?しかしあるのかぁ〜?なんて心配してたら、
 あたし、持ってます、とカナコさん…天使に見えました〜(笑)。
 このセンス抜群のフォートも、ダーリンが撮って下さったんですヨ。
 カナコさん、ボーズさま(ダーリン)、ありがとうございました!

 背の高い白金先生が壁に掛けてくれたシーンは、
 実は台本には書いていない、稽古の中から生まれたものでした。
 そうやって、ドルチェ・ヴィータの運命の一日に立ち会った、仮面。
 天国のお父さんは、この目を窓にして、
 娘たちを見守っていたのかもしれませんネ。











      世界樹に灯る“ 永遠の祈り ”
  物語のすべては、この祈りの為にありました。  
↓火が灯ります

直後に、早い人でわずか30秒という、 
この芝居で、裏がもっとも激しく動く早換えがあったので、 
実は役者はドキドキな時間帯なのですが、 
その事は頭から追い払って、 
祈る事に集中して下さいとお願いしました。 

人を愛する事を思いながら、みんなが本気で本当に祈れば、 
それはきっと客席を包み込み、もっと遠くへと流れていく筈・・・。  
そう信じて、それがやりたくて、この本を書きました。
 

今、このキャンドルホルダーはみんなが一つずつ持っています。 
























物も使っていると魂を持つと言ったのは、柳田國男だったと思いましたが、
小道具、といいつつ道具ではない、大事な出演者だと、
あたしはいつもそう思っています。

今、役目を終えて、ゆっくりと休息している彼らは、
眺めるあたしを、その瞬間に飛ばしてくれる、
芝居の神様のお使いになりました。

永遠、というのは、彼らの中にこそある、
そんな気がしています。