丸諒のお話解説その二だす。
どないなつもりで来はったんか、一筋縄ではいかへん様子のお梶はんを前に、
震え上がる小羊たちとお猿一匹。(て、誰のことや!by千次)
いったいこの先どうなってゆくんや。
「着いた、着いた。懐かしの我が家や〜。」
何も知らんと、脳天気に帰って来はりましたわ、
我らが主役、西鶴せんせ。
好色五人女の売上げ50両を懐に、お供の忠助はんと早や遊びの算段や。
右から左で、お金もせんせのとこでは休む暇ももらえん。
けど、そんな呑気にしてはる場合ちゃいますでぇ。
まずせんせ、真っ昼間からいきなり千次がおってビックリや。
ま、ロクなことやないなて思うた通り、
千次はゆんべ、店の女郎から無理心中を仕掛けられ、
刃傷沙汰からほうほうの体で逃げてきたのやった。
それも、女郎に惚れられたからやのうて、
当てつけ心中の相手にされただけちゅうのが真相やから、
ドン臭い話や。
けど、売りもんの女郎の顔に傷をこさえてしもて、
新町に帰ったら千次は半殺しや。
郭の男衆のほんまの仕事は、いざ抱えの女郎が足抜けを計ったら、
ボコボコにしてでも連れ戻す、
かなり荒くれた内容だったりするわけやね。
向かんのよ、この男には。
あんじょう話をつけたるから、これを潮に郭モンから足洗え、
て諭されても、そう簡単に踏ん切りもつけられへん。
人がええ子なんやな、ほんまは。
さて、西鶴せんせの目ぇに止まったのは、見知らぬ婆さん。
誰や、あんた。
おなつや。
へ?
お夏清十郎のお夏じゃ言うてんねや、この因業爺ぃ!
おどれのおかげでさんざんな25年やったんや、
どうしてくれる!
どうして、て言われても今頃んなってそんな。。。
いひゃあー!
とーとつにあらぬ声を上げたんは、忠助はんや。
どないしたん。
忠助はんは、お梶はんの顔を見るなり逃げてってしもた。
な、なんや?
そないややこしいところへ来はったのが、
せんせの息子の藤吾はんや。
しっかり者の堅物で、
粋やら情緒やらいうもんの入り込む余地のない、
この若旦那はん、あいやいや、
今は旦那はんの藤吾はんに、せんせはまったく頭が上がりまへん。
その上いっしょに、大黒屋のお常はんまでいてはる。
な(んでこの二人が)?
な(にしに)?
な(んちゅうこっちゃ)!
慌てるせんせ。
一難去ってまた一難や、て、何も解決してまへん。
なんや知らん、問題が次から次へと降ってくる。
さっき帰って来たばっかしやのに。。。
やり手のビジネスマン藤吾はんは、
さすがに鮮やかにお人払いをしなはって、ご自分の本題に入らはりました。
・・・怒ってはる。
せんせの大黒屋はんのつけが、75両にも膨らんどるから。
うそお?!
75両言うたら、今のお金で465万円ですがな。
丸諒もあんぐりだす。
けど、元禄言うたら300年前のバブル期や。
考えてみたら、土地転がしやら株式相場やらで、
平成バブルの時代にも、一晩で何十万て使えるお人がゴロゴロしてたんやもんなあ。
そういえば、西鶴せんせのご実家は紙問屋や。
ちょうどこの頃、黄表紙本いう、
今で言うところの単行本みたような刊行物が出始めて、
紙の需要が一挙に増したさかい、
せんせのお宅も相当潤ってはったんとちゃうやろか。
もっとも、紙を仰山使うようになったんは、
ベストセラー作家のせんせの仕業と言えんこともない。
自家循環商法て感じ?
それとも、家に唸るほど紙があったさかい、
せんせは作家になったんやろか。
うーん、にわとり玉子やな。
しかし、せんせもようもそんだけ遊ばはって。。。
お常はんも、そこは生き馬の目ぇを抜く郭の女将、
せんせの泣きどころをちゃあんと押さえて、
若旦那はん、あいやいや旦那はんのお店へ、
「ご挨拶」に行かはったんだすな。
はんなりか弱いおなごのフリして、あなどれまへん。
西鶴せんせはさんざん息子はんにお説教されて、
ほんまにもうぐうの音も出えへん。
お常はんは、そこは大事なせんせのことやから、
やんわり上手にフォローしてくだはります。
けど、もとはと言えば、あんたが藤吾んとこに行かなんだら、
こないに怒られることもなかったのにぃ、
もお、お常はんのいけず。
て、もともとのもとは、せんせの遊び過ぎのせいですやろ。
お常はんは、ひらりひらりと手を変え品を変え、
なんとか息子はんからご返済頂こうと押したり引いたり。
けど、藤吾はんは絶対出さん、てテコでも動かん。
世間からちやほやされて浮かれっぱなしの親父様に、
熱いお灸を据えな危ない、て、
心配したはるんだすな。
けどそれを、やさしい言葉にしてやれん、
せんせとは併わせ鏡のような、不器用な息子なんやね。
ご自分の始末はご自分でつけなはれ。
算段がつかんと言うのやったら、この家売ったらよろし。
ええええ?!そんな殺生な〜・・・
あ?
せや、わし50両持っとったんや!
さっき版元の森田屋からもろたんじゃ。
おまえが嫌う好色五人女が、これだけの金になったんやで〜。
狂喜乱舞するせんせとお常はん。
とりあえず1ヶ片付いた。
と思たら、
「ちょっと待ったー!!」
お、お梶はん、あんた全部聞いてたんかいな。
油断も隙もないババア。。。
やかまし!好色五人女で手に入れたっちゅうんやったら、
わしが稼がせてやった金やないけ。
これはみーんなわしのもんや!
そんなご無体な。。。
50両を丸抱えして離さへんお梶はん。
「清十郎、見ていておくれ。そなたの無念、きっと晴らしてやろうから」
お梶はんの目的は?
せんせは借金返せんの?
千次はこのまま半殺しか?
はたまた忠助はんの叫び声には何の意味が?
謎が謎を呼ぶ第一幕は、これにて幕引きだす。
次回はいよいよ『好色五人女』の世界、
第二幕でございます。
それではどなたさんも、お世文字さまでございました。
↑
これほんまは山東京伝。
西鶴とは関係あらへん。
目次へ