<Day By Day>

7月9日(水)去年より涼しなあ・・・


  今夏の劇団内 Work Shop では、テキストに松澤佳子氏の『生きて想いをさしょうより』を取り上げています。
昨年のお正月に紀伊國屋ホールで上演された、松澤さんの江戸三部作のひとつ、『星月数えて君を待ち』に出演させて頂いたのがご縁で、別班のやっていたこの脚本を知る機会に恵まれました。




『星月・・・』は武士編でしたが、こちらは元禄時代の大坂を舞台に、御存知井原西鶴をとりまく人たちの人間模様を描いた町人編。
上方情緒あふれるエンターテイメントな作品で、初めてゲネプロを拝見した途端、「うわ!こっちに出たかったよ〜ん」と一目惚れしてしまった大好きな世話物の世界です。



  離風霊船ではなかなか知り得ないジャンルのお芝居なので、ぜひウチの若い衆にも体験して欲しい、と音頭取ってみたわけです。
なにせ全編大阪弁なので、音もニュアンスも出すのに一苦労の格闘中ですが、上方言葉の美しさと、江戸時代ならではの情緒性が奏でるワールドは、まさに魅惑の一言に尽きます。



この本がエンターテイメントである所以は、登場する女達全てが西鶴の書いた『好色五人女』のヒロイン達とダブルイメージになっているところにあります。
普通の二役でも魅リキがあるのに、その片方が好色五人女と来ては、女優にとってはかなりソソラレル本なのであります。稽古場では男優陣までも女役に手を伸ばし始め、よっぽど女らしいと評判を取っているこの頃デス?!




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そんなわけで、お話の解説を丸諒がさしてもらいます。
イントネーションは上方弁で読んでくれはったらよろしかと。。。




時は貞享三年(1686)四月。
翌年の九月には元禄に改元されようちゅう、
江戸文化がもっとも華やかに、繚乱と咲き乱れた時代。。。
まさしく江戸版バブル期が始まった頃のお話でございます。


処は大坂、鑓屋町(やりやまち)は井原西鶴せんせの居宅。
船場あたりで商っている、紙問屋の身代を息子はんに譲って、
西鶴せんせはこの大坂城の足下の町で、
流行作家として悠々自適のご隠居生活を送ったはります。
ついこの二月にも、『好色五人女』という浮世草子を書き下ろし、
発売と共に売り切れ続出の大評判。
『好色一代男』『西鶴諸国はなし』と、
出す本はすべてベストセラーのせんせは、
大坂一の歓楽街新町でも、粋な遊びっぷりで大人気の極楽とんぼ・・・
あ、やのうて、
ますますお盛んな、45才の男やもめでおます。


今、せんせはお江戸へ行かはってご不在だす。
留守を守るんは、通い女中のお秋ちゃん。
やさしいてよう気の付くええ娘なんやけど、
身持ちの固すぎるのが玉に傷。
せやから21にもなってしもて、ちょっこし行き遅れ・・・
てまた、余計なこと言うてもうた、堪忍え。


そこへ突然、千次ちゅう男が、せんせに助けてもらおて飛び込んで来ます。
どう見ても堅気のモンには見えへん風体。
聞けば郭の男衆やというけど、その割にどこか可愛らしお人好しな感じ。
郭と聞いては、もちろん警戒心丸出しのお秋ちゃんやけど、
男があんまり必死なんと、腕から血を流してるんを見て、
旦那様の留守中やけど、つい家に上げてしまいます。


ところがそこへ、またも来客。
新町の郭の大店、大黒屋の女将はんが、婆さんを連れて来はった。
香のかおりも匂やかなキレイキレイな女将のお常はんと、
乞食と見紛う薄っ汚いババア。
ものすごいコントラストや。。。
二人ともせんせにご用があるて言われても、
今お留守なんだすて。
忙しいお常はんはすぐ帰らはったけど、お梶いうババアは居座ってしもた。


          このお梶はん、これまた堅気の婆さんには見えん、
               なんや得体の知れん不敵な態度。
               千次がド阿呆なこともすぐ見抜き、
        とてもおぼこなお秋ちゃんの太刀打ち出来る相手やない。
            飯まで食わすハメになってしもたところへ、
                   また来客や。
            今日に限ってなんでこんなに人が来るんやろ、
                     て、
                お芝居の常道やから、はは。

うひゃ、いとはんや!乳母のお今はんを連れて、いとはんがおみえんなった。
よりにもよって、こんなワケの分からん状態の中へ、
いとはんが登場せんでも。。。
いとはんちゅうのは、お嬢さんいう意味。
つまり、西鶴せんせの娘さんなんやね。
お名前はお峰はん、言わはります。
お可哀想に生まれた時からお目が見えはらへんから、
せんせはそれはもう可愛くて仕方ない。
その割に、兄の藤吾はんにお任せんなって、
自分は勝手気ままに風流暮らしをしたはる、不良パパやけど。。。
あ、また余計なこと言うてしもた。

母親代わりのお今はんがお止めするのも聞かんと、
いとはんはお家に上がってしまいます。
今日は、亡くならはったおっ母様のご命日やから、
お父様は必ず帰ってみえられる、
せやから待ちます、て。
けど、お今はんが気になるのは、そこの不逞の輩二人。
しかもお梶はんは、いとはんを前に、
お父様の悪口を言い始めた。
なんぞ恨みでもあるんかいな、何しに来たんや?!
「これや。」

お梶はんが投げて寄越したんは、『好色五人女』の黄表紙本。
この好色五人女は作り話やのうて、登場人物はみんな実在の人という、
実録物なわけです。


歌舞伎や浄瑠璃で有名な順番こに並べると、
恋人に逢いたさのあまり、家に火ぃつけて火あぶりになった八百屋お七、
駆け落ちに失敗し引き裂かれ、男は殺され女は狂ってしまったお夏清十郎、
姦通がバレて、二人とも磔の刑になった大経師女房おさんと手代茂兵衛、
密通の疑いをかけられて自害に追い込まれた樽屋おせん、
男装してまで恋を追い掛け、ハッピーエンドを迎えるおまん源五兵衛、
(ほんまは心中した二人、西鶴せんせが唯一ラストに手を加えはった話)
という五弾になりますやろか。

殊に、八百屋お七、大経師おさん、樽屋おせんのエピソードは、
ここ数年の内に起きたばかりの事件やから、
西鶴せんせがジャーナリスト作家と言われる由縁なんだす。
そういえば、300有余年の後に、
大橋の泰彦兵衛やらいう戯作者が書いてる芝居本も、
似たような手法を取っとるな。
西鶴せんせは、その道のパイオニアちゅうわけやね。
お夏清十郎、おまん源五兵衛の事件は、
25年前に起きたことやったのやけど。。。

みんなでお梶はんの話を聞く内に、
なんとこのババア、お夏清十郎の生き残り、
お夏その人の成れの果てやちゅうことが分かったからさあ大変!
ほんまかいな。
お夏て絶世の美人だったんちゃうんかいな。
つらつら疑問を持ちつつも、
西鶴いう人は25年も経って尚、人の不幸で一儲けする酷いお人や、
と語るお梶はんの本気のまなざしには、
誰もぐうの音も出まへん。


そ、それやったらせんせに何をしろと言わはりますのん?
「せやなあ、どうして頂こかしらん。」
無気味に微笑むお梶はん。
こ、こあい。。。
あなたは悪もの?






お話の続きは、また次回ということにさして頂きまひょ。
今のところ、稽古したのはここまでやからね。
今日はいよいよ西鶴せんせのご登場や。
ここからは男はんの見せ場になっていきます。
新たに出てきはるんは、ええ男ばっかりなんやー。
ほなまた、近々に。
お世文字様でございました。

 はよ、出してえな・・・




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