プリマヴェーラ 〜春〜 によせて


優美ですよね〜。。。

なんていうか、言葉にするのがもったいないような気にさせる絵です。





この『プリマヴェーラ』は対を成す『ヴィーナスの誕生』とともに、
長い間フィレンツェ郊外のメディチ家の別荘に飾られていました。


館の主はロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ、
通称イル・ポポラーノ。



また呼んだぁ?

この、メディチ分家筋のイル・ポポラーノの結婚祝いに、
同じ名前の本家の当主、ロレンツォ=イル・マニーフィコが描かせた絵だとも言われています。


でも、花嫁や花婿が描かれているわけでもなく、たくさんの群像がバラバラに主役を演じているようで、
言われなければ結婚祝いの絵とはわかりませんよねぇ。

実際、他の説もあります。

これは、ロレンツォ=イル・マニーフィコが、
悲劇のプリンス、弟ジュリアーノへの思いを託したオマージュだとか、
ジュリアーノの悲恋を哀れんだ絵だとか。。。

真逆ですよね。

制作年代すらハッキリ出来ないこの絵の由来については、
こんな風に諸説が入り乱れ、いまだに決定版が無いのです。


何が描いてあるのか、何故こんなに人物がくっきり立っているのか、
見れば見るほど色んなものを発見してしまう、あまりに典雅で不思議な絵。。。


分かっているのは、この絵がメディチ家の別荘でひっそりと生き長らえてきたこと。

そして、もう一つ。

千年続いたキリスト教絵画を凌駕して、世界にこの異教の神々がいきなり主役として踊り出たこと、です。


時代の劇的な転換がこの絵に隠されている。

それを読み解くことが出来るはずです。

それはまた逆に、時代のうねりの中を生きた“個人”が、鮮やかに蘇えることにもなるでしょう。


会いたいですネ〜、絵の中の神々と、絵の向こうの人々に。

丸諒もチョット読み解きにファイト燃やしてみようかな…大変なことになりそうですが(笑)

La primavera   1477 / 78, 1482/ 85 


中央で、後光のような木漏れ日を背負っているのがヴィーナスです。
なんだか菩薩さまを思い出すのは丸諒だけ?(笑)

オレンジがたわわに実をつけ、足元には無数の草花が咲き乱れています。
いい匂いがただよってるんだろうな〜。
この森は、ヴィーナスの園だと言われています。


みんな美しい人たち(人じゃないけど(-.-;)なのに、右の隅っこに不穏な男がいますよね、
頬っぺたふくらまして。
死神ぃ?なんて思っちゃう顔色ですが、彼は
ゼフュロス、西風です。
だからフ〜ッ、ってやってるのネ。


ゼフュロスに捕まえられそうになっている乙女は、花の精クロリスです。
口から花出してるでしョ。

クロリスがすがっているのは、花の女神フローラ
一人だけ花模様の衣をまとっていて、圧倒的な存在感を放っていますよね。
ゆえにこの絵の真のヒロインは彼女だとも言われています。



左寄りにいる白い三人は、
カリタス=
三美神といい、ヴィーナスに従う女神たち。

伝統的に「輝き」「喜び」「花盛り」を意味するカリタスですが、
プリマヴェーラでは「美」「愛欲」「貞節」と解釈されています。

ヴィーナスの頭上で飛んでいるのは、お馴染みのキューピット=エロスですね。
マルスとの間に出来たヴィーナスのやんちゃ坊主(笑)です。


そして、一番左端で天を見上げているのがメルクリウス
英名のマーキュリーの方がメジャーですね。
でも、このメルクリウスは天界と異界との伝令を司る神様、メッセンジャーなので、
日本でも実はお馴染みの名前。。。〒メルパルクのメルは彼から採ったのデス。






この絵にはいくつものドラマが描かれています。

まず風と花の物語・・・


西風はいわゆる偏西風のことで、
ヨーロッパでは春を告げるあたたかい風です。

なのに、なにゆえ、
こんなちべたそうな死びとの風情なの?

ここは解釈のし甲斐のあるところなのですが。。。

ゼフュロスは、
花のニンフ、クロリスに恋をします。
それでこんなに追いかけて追い詰めて、
いるワケ。

クロリスは驚いて逃げようとしているのですが、
実はこれ、
イヤよイヤよも好きのうち、ってヤツで、
彼に求愛されて、
クロリスは無自覚に変身してしまう。。。

それが、花の女神フローラ。

れっきとした神様に愛されて、
ニンフが女神に昇格しちゃった、
まさにその瞬間を切り取っている、というワケで・・・

そう、この女人二人は同一人物なのです!

一つの絵の中に同じ人物の時間経過を描くなんて、
いやぁ意表突かれた〜、ダイナミックですね〜。

ゼフュロスはこんな描かれ方をしてますが、
8人いる風の神様の中ではもっとも美青年なのです。

例の甘美派(笑)ブーグローの絵では、ぜんぜん違うイメージで描かれています。
見る?



一方、喜んで踊ってるように見えるカリタスたちにもドラマがあります。

一番右の女神は、
左右の二人と優雅に指を絡ませあって、
やさしげな風情。
気品があります。

だけど、他の二人の手は、
がっちりと結ばれていますよね。
コレは、掌を押し合って、
軽い諍いをしているんですって。

なーぜーか?
それは二人が
相反する「愛欲」と「貞節」だから。
イッちゃえ、イッちゃえ!
ダメダメよ〜!
てな感じ。

そおかなぁ?
あたしたち親友よっ、
とか確認し合ってるんじゃないの?

と、丸諒も思ったんだけど、
そう言えばこの「貞節」ってば、どこ見てんの?

で、視線を追うと…









 お、メルクリウスだ。
 じーっと見てます。

 「貞節」、恋じゃないの?これ!

 でもなんたって純潔の人なので、
 つい足踏みしちゃう。

 それを「愛欲」姐さんが、
 まどろっこしいわね〜何がいけないのよぉ
 とか諭してる。

 でもぉ…
 とか迷ってても、もう遅いのです。
 だって、
 「貞節」はネラわれているのだもの。

 恋の矢に。





ほらね、エロスの炎の矢は、真っ直ぐ「貞節」に向かっているでしョ。

 この悪戯小僧はやたらと矢を射て、
 よけいな色恋沙汰を引き起こすので、
 お母さんがこらしめに目隠しをしたんだって。
 
そんな絵もありますヨ。

 そのほうがよっぽど危ないと思うけど。

 そうなんです、これは
恋は盲目の象徴。

 目隠しをせずに引く矢は精神の愛を表し、
 すれば肉体の愛を表す、ということで・・・

 ヤバイヤバイ、
 「貞節」が貞節でいられるのも、
 風前のともしび。。。

 だけど、
 この春の園の女主人ヴィーナスまでも、
 その手をかざして、
 「貞節」にパワー送ってるみたい。

 これが愛よ〜来るべき時が来たのよ〜
 って。




この絵の中の物語は、ざっくり言ってこんな感じ。
ふ〜ん、要は恋せよ乙女な絵なのね〜。

と、言いつつ、
それだけじゃ納得できない謎が、丸諒的にもいっぱいあるゾぃ。




このメルクリウスは何やってんだ?
オレンジの実でも落としたいんかえ?

だいたいなんでメルクリウス?
色恋と言えばゼウスだし、アポロンとかオルフェウスとかイケメン神様は他にもいるのに、
そうそう、エロスを青年として登場させたっていいわけで、
乙女が恋する相手が神のメッセンジャーボーイとは、物堅すぎるキャラじゃない?

そして、美男の誉れ高いゼフュロスが、なぜこんな風に描かれているの?

この画面の左右に、なぜまったく別々のドラマを描いたんだろ?
意味があっての合体でしょうから、だったらこの二つを繋ぐものはなに?

そもそも、こんな寓意てんこ盛りな絵がなぜ描かれたわけ?



なにせ500年も前のことなので、
描かれた当時とは、世の中にある物も考え方もまったく違うわけで、
その辺の背景が今やぼんやりとしちゃってるから、諸説紛々の絵になっちゃったんですよね。

この絵の一番の謎は、メルクリウスです。

彼以外の登場人物はみんなヴィーナスに由来しているのに、
彼だけが関係ない、異分子なのですね。

貞節と絡むことで、エロスからヴィーナスへと繋がる連鎖を作っているので、
かなり重要な意味を持って登場しているハズなのに、
メルクリウスであるおかげで、単純な愛の絵とは納得できない流れになってしまっているのです。


それゆえ、定説なき謎の絵画として人気が高く、
色んな人が謎解きに挑戦してきたワケです。
そう、最近「ダ・ヴィンチ・コード」からこっちに流れてくる人も増えてるらしい(笑)。

まあ、これだけ美しい世界ですからねぇ、真実を見つけたくなりますよね。



丸諒が知りたいのはただ一つ、描いた人の想いです。


こんな美しい世界を残してくれたボッティチェッリって、どんな人だったんだろう。
何があって『春』を描いたんだろう。。。
なんかあるよね、この絵の裏側には。

実在の物語の方が、俄然ミステリアスに輝いて見えてきた。


これは時空を超えて、サンドロ・ボッティチェッリの時代へ行ってみないと。



と、いうわけで、丸諒の旅にチョコっとおつきあいいただいちゃおっかな〜?

ご興味のある方は、下の 「貞節」 をクリックしてください!







          その昔、地上に楽園を作った男たちがいました。


          15世紀、花のフィレンツェ。


          ボッティチェッリの青春は、
          この麗しき時代と一緒に輝き、
          翔け抜けていったのです。。。




    
    
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