ドラマチック・ベルニーニ
〜刹那と久遠の演出家〜













『エクスタシー』の台本を初めて開いた日

自分が演じるアンのセリフの中に

“聖女テレサの法悦” というフレーズを見つけて驚きました




ベルニーニは 自分がもっとも愛する彫刻家

中でも“テレサ”は そのキッカケとなった作品だったのだから




読み進むと “聖女テレサの法悦” は

この物語の核心になっていることが分かりました



それも アンという女の化身と言ってもいいほど

彼女の人生と融合する 奇跡の存在として描かれている




あたし、テレサになれるんだ…




テレサと向き合える芝居に出会えたなんて



魂のすべてをかけて この作品とアンに入っていくようにと

言われているような気がしました




そして


この巡り合わせは なにか 自分の運命を開くものになるのかもしれない



ほとんど確信に近く 自然にそう感じている自分がいました







こうして 熱い夏がはじまりました
















あたしの愛してやまないベルニーニの世界を、少し、ご紹介させていただこうと思います。







ジャン・ロレンツォ・ベルニーニは1598年生まれ。

高名な彫刻家の父に、“ローマのミケランジェロ”として育てられた天才で、

16、7才の頃から早くもその才を発揮しはじめ、

長じて、バチカンのサン・ピエトロ広場の設計も手掛けた、彫刻家、建築家です。


彼はまた、ローマを舞台に見立てて、法王庁の行事を華やかに演出する、

卓越したイベント・プロデューサーでもありました。


ベルニーニはローマの為にあるのではない。
ローマがベルニーニの為にあるのだ。


時の法王から称された言葉です。




しかし、彼の名を最も有名にしているのは、やはりこの作品、バロック彫刻の最高傑作、

『聖女テレサの法悦』です。


神性なる彫像であることは間違いないけれど、我々を惹きつけてやまないものは、

やはり、このテレサと天使の表情でしょう。

こんなにエロチックな“石”を、あたしは見たことがありません。







ベルニーニの彫刻にはドラマがあります。


身体と、感情と、魂、それぞれに…。


それらが一体となって噴出した、

クライマックスを切り取っているところに、こよなく魅せられます。



ベルニーニの彫像にはどれも、“その瞬間”があるのです。






























これも有名な、『アポロとダフネ』1622年




恋に落ちる矢を射られたアポロと、

恋を遠ざける矢を射られたダフネ。




今にも捕まえられそうになったダフネが、

月桂樹に変身する、その瞬間です。



足も髪も、もう変わりはじめています。


あどけない無垢のダフネ









『プロセルピナの略奪』1621年












冥界の王ハデスに一目惚れされ、

黄泉の国へとさらわれていくプロセルピナ。








見る角度で違う表情。
指が食い込む、肌の弾力。


ハデスの手の血管、指の節。




生身じゃないんですよ、硬い大理石です。









もつれる髭。


石の涙。。。





この二つの作品は、ベルニーニが23〜24才の時のものなのです。

信じられますか?









そしてもうひとつ、“法悦”と並び称される驚嘆の彫像が、

『福者 ルドヴィカ・アルベルトーニ』1671年





死の淵をさまよう、神の花嫁の恍惚がテーマです。

衣も、寝台の布も、すべてが大理石。



『聖女テレサの法悦』は、49歳の時の作品。

そして、この『…アルベルトーニ』を彫った時、ベルニーニは実に73歳だったのです。



テレサより、さらに大胆に、さらに儚く…



息遣いまで聞こえてきそうです。



いったいぜんたい…どういう人生を送った男だったんだろう。

思わず考えずにはいられません。











ベルニーニの作品は、ローマのいたるところで見られます。



300年以上、平気で雨ざらしになっている傑作たち。



ベルニーニの舞台は、まさしく、ローマそのものだったのですね。






ベルニーニが刻み付ける顔は、ただ美しいというだけではない、

心の奥底にある個人の本質まで浮き彫りにしています。


その腕を頼られて、歴代法王の彫像などもたくさん手掛けている、

ソウル・ポートレートの達人なのですね。



ベルニーニは、人の心の中にこそ、

もっとも劇的なるものが潜んでいると、思っていたのではないでしょうか。



時にスキャンダラスに、同時に繊細に、

ドラマチックを求め続け、魅かれ続けていった男という気がします。



その躍動する心のざわめきに、あたしはこよなく魅了されるのです。



『コンスタンツァ・ボナレッリの肖像』という、特別な胸像があるそうです。

彼のソウル・ポートレートの中でも、傑作中の傑作と言われているこの作品のモデルは、愛弟子の妻。

ベルニーニが、生涯愛し続けたひと。。。



ドラマチック…やってたんですね、本人も。



どんな胸像なんでしょう。

…ローマに、行こうかな。(笑)













『エクスタシー』を巡る夏は

あたしにも本当のエクスタシーを教えてくれました


この旅にふさわしい 永遠の一瞬を知ることが出来た。。。

アンを演れてよかった


あたしの中に刻み付けられた時間は

たぶん一生鮮烈なままだと思います


テレサは本当に あたしの特別な人になってしまったのです



この幸運と奇跡に

 感謝





























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