
〜伊東由美子編その2〜
竹下:離風霊船を立ち上げたのは大学を卒業してからですか?
伊東:そう、卒業して1年くらいかな。
竹下:大橋さんとはどこで知り合ったんですか?
伊東:私が大学1年生の時に、当時、すでに武蔵工大を辞めていたはずなのに、
演劇部の稽古を見に来てて、第一印象は「変なおっさん」、
「OBなのに来ちゃってさぁ〜」って感じだったな。
誰も紹介もしない割には、その人が来ると、先輩方の態度が変わって、
余計厳しくなるっていうか、偉そうになってきたりして。
「あの人が来るとさぁ〜余計大変なんだよね。」みたいなことをグチってたかな。
それが大橋さんだった。
しかも、大橋さんが顔出したその次の日には演出も変わってたりして、
つまり稽古のあと、密かに演出に色々言ってるってことなんだけど。
たとえば、これは今の片鱗が見えるんだけど、
ラストにこんな仕掛けが出ちゃったみたいな。
それはそれで面白くはなってるんだろうし、
大橋さんにしてみれば悪気はなくて、ただの面白アイディアだったんだろうけど、
私たちにしてみれば、ずっと稽古してこうやろうって決めてやってきたのに、
「いきなりあの人が来たら変わるのかよ」みたいな悔しさがあったりして。
それで、その1年生の春秋公演が終わって、普通は年2回しかやらないんだけど、
1月か2月に、大橋さんが本を書いて演出する、番外公演を学校でやりたいって
話が出てて、それに出ないか?って誘われ。
そこで大橋さんと一緒に芝居作って、大橋さんのイメージが変わったね。
この人も、つかさんが好きなんだっていうことがわかったりとか、面白かった、すごく。
竹下:作品が?大橋さんが?
伊東:両方。
大橋さんと話してると全然飽きなかったし。
その公演後にちょっと淡い思い出なんかもあったりしてね(笑)
竹下:一説には、そもそもその番外公演の台本は伊東さんのために書かれたとか?
伊東:書きたいものがあって、それをやるのに私ならって声をかけてくれたみたいだけど、
でも、それは今でも変わらないよ。
「ゴジラ」を書かせたのも神野(美紀)がいたからだし。
それまでうちにあんなヒロインできる女優いなかったから、
あぁいう本はありえないわけよ。
神野が入ったからあの本ができたんだろうと思う。
今でもそうで、今のメンバーに当てて書いてるわけだから。

「ゴジラ」より。向かって右側、あどけなさの残る相川嬢デス。
竹下:今までで、いちばん印象に残ってたり、苦労したなぁと思う公演はありますか?
伊東:いろいろあるけど、役者として苦労したなぁって思ったのは「時代、すでに・・・」かなぁ。
かっちょいい女の代名詞みたいな役。
フジ子ちゃんがもっと知的になった感じ?それでがんじがらめになっちゃった。
竹下:伊東さんががんじがらめになったんですか?
伊東:「ゴジラ」のプレゼンターとか、「赤い鳥逃げた」の東みたいな、
男性的なかっこよさじゃなくて、女性として魅力あるかっこいい役というのが
すっごく恥ずかしくて。
私がもっとも苦手とする役をもらったという意味でがんじがらめ。
そういうのは非常に苦手ですね、今も。
今は年齢的にそういう役さえ来ないけどね(笑)
竹下:作・演出としては、どの作品ですか?
伊東:それぞれの作品に思い入れはあるんだけど、
私の中では「銀幕俳優記」とか「闇夜のフランケンシュタイン」とか、
あの時期は好きかな。
竹下:それは、伊東さん個人のプライベートの要素も含めた「時期」ですか?
伊東:そうだね。想いが強かった時期というか。
だからその分、本としては失敗するんだけどね。
想いが強すぎても、いい本が書けるかっていうと、それは決してイコールではなくて、
本としては本当に駄作だなぁとは思うんだけど、
自分の中では、納得ができる本を書いてた時期だなぁと思う。
まぁ自分の書く本は、すべて駄作だなってだいたい思っちゃうんだけどね、私の場合。
大橋さんの本の書き方を見ていると、なんでこんなにうまく書けるんだろうなって
感心しちゃうもんね。未だにそれは思うし。
竹下:では、自分で書いたものに限らず、芝居の好きなセリフとかありますか?
伊東:唐十郎「少女仮面」の
「そこいらの男の子と死ぬの生きるのってジタバタしたいなぁ」ってセリフかな。
(「あたし今、廊下に血をこぼしちゃったの・・・まるで季節はずれのひな祭りね、
ここ五年、もうなくなってたのに、あの水飲み男にシャツひっちゃぶかれてから、
狂い咲きのように始まったのよ。あぁ、そこいらの男の子と死ぬの生きるのってジタバタしたいなぁ」というセリフ)
どうしても私の中で、メロメロなイイ女を演じることが、
それが嫌いなわけではなくて、憧れもあるはずなんだけど、
どこかで自分自身を押さえつけるものがあって、
ちょっと人前でやるには恥ずかしいってのがあるでしょ。
でもその唐さんの、今まで殻を被ってた人がバリンと破って、
死ぬの生きるのってジタバタしたいわぁって言うのがね、
ここにパーッと行けたら面白いだろうなとか思って、すごく印象的なんだよね。
竹下:それは学生時代に見たんですか?
伊東:私は唐さん自身がやったのは見てないんだけど、
「少女仮面」は大好きで、いつかやりたいなぁと思ってる作品です。
私が大学入ってから唐さんを見るようになって2〜3回目くらいで、
根津甚八さんだの小林薫さんだの、みんな状況劇場辞めちゃったんだよね。
小林薫はいいで〜!かっこいいよぉ!!
根津さんは男前で、主役って感じなんだけど、
私はやっぱり根津さんより小林薫さんの、
脇で悪役の帝王みたいに対峙してる方に憧れちゃうもん。
だから、自分の中でもどっかで、主役よりも、それを喰うくらいの、
魅力ある悪役をやりたいってのはあるね。

芝居でも何でもないのに家で撮ったという写真。
どうですか?この色香っっ(>w<)o
竹下:ところで離風霊船の芝居の中で、伊東さんの失敗談とかありますか?
伊東:これはやっちゃいかんだろう、もう役者辞めた方がいいなって思ったのが
2回くらいあったよ。
まず、決めなきゃいけないときに噛んじゃった恥ずかしさ。
「うめの、きの、いく」っていうう〜んと昔の芝居で、
すごくかっこいい女を演じてたんだけど、
ラストのぐわぁ〜と言わなければいけないセリフをまず噛んで、
上着をパンって払わなきゃいけないシーンで上着が顔にまとわりついちゃったりとか、
ホントにフォローできなくて、たまたまピストルの芝居だったので、
そのままピストル自殺しようかと思ったくらいダサダサでした。
あと、誰も助けてくれないという意味では、「一郎の災難」のオープニングの長ゼリ。
あの時はあげくに、客席に刀まで飛んじゃうし。
あの公演は二度とやりたくないね!
竹下:伊東さんと松戸さんが親子の、裁判で争う芝居ですね。
伊東:私は検察側だったんだけど、事件のあらましを語らなきゃいけなくて、
それがまた大橋流の口調で覚えられなくて、
でも、会話じゃなくて長ゼリだから誰も助けてくれなくて、
しかも裁判用の堅いセリフだったから、適当にごまかすこともできなかったわけ。
竹下:あれは大変そうでしたね、伊東さんの長ゼリが2ページか3ページくらい
ずっと続いてて、それをしゃべり終えてから芝居が始まるっていうシーンでしたもんね。
伊東:しかも、傍聴席に座っている他の役者たちの
「私たちは助けられませ〜ん。がんばれ!」って
みんなも不安がってる目を見ちゃったもんだから余計集中できなくなってきて、
アレはしんどかったね。

若かりしリブレメンバー。みんな、あどけなさが残ります。
よーくご覧いただくと、懐かしいあんな人やこんな人まで♪